西風新都石内物語(平成8年)


 広島市の重要プロジェクトに位置付けられている「西風新都」建設に係わり、本会議で質問を行いました。広島市の行政姿勢及び行政事務に関して、数々の問題があることが表面化しました。事件の全容が明らかになるにつれ、建設省は「このような違反事件はかつて例がない」と驚きを隠さず、正常な仕事をしている関係者は前代未聞とただ呆れるばかりの事態に発展していきました。


これまでの調査ではっきりした行政自らによる違反行為は、都市計画法違反、道路法違反、公金の不当支出などがありますが、それらをチェックする会計室の審査係が見落としたり、また監査委員会は関心を寄せることもなくやり過ごしたりと、いわば市役所総ぐるみで違反を犯していたことは極めて重大です。

また、開発業者による違反行為は、都市計画法違反、道路法違反に加えて、墓地、埋葬地などにかんする法律違反および無許可造成があり、特に悪質なのは、里道・水路など国有財産を何の同意も得ないまま埋めたり削り取ったりした、言語道断の違反行為です。

 

しかも、これら開発業者の違反行為をつぶさに調査してみると、指導すべき立場にある広島市当局が黙認していたり、時には共同して違法行為を遂行していた事実までも明らかになってきました。

 

行政は法律に基づいて住民を指導、監督し、あるいは規制して許可を与えるところですが、行政自らがが法律に違反した行為をしたとなれば、今後の行政は大混乱に陥ることになります。したがって、違反の事実が判明したらそのまま放置することは決して許されることではなく、責任の所在を明確にしつつ迅速に正常な状態に戻すことが必要なのです。

 

しかし、一度犯した法律違反をすっきり整理するのはなかなか難しいことで、筋道を踏み外した下手な処理をすると混迷はますます深まるばかり、ということも少なくありません。

 

今回の場合も、違反事実が表面化して1年を経過したあたりから、「広島市は行政の体をしていない」という、酷評がささやかれるようになりました。

 

行政は毅然たる態度で法律に則した姿勢を貫き、住民福祉の向上に寄与すべきことはいうまでもありません。

 

二度とこのようなことが起きないよう関係者の猛省を促すのと同時に、国際平和文化都市を標榜する広島市が健全な行政執行の姿をとりもどし、民主主義の根本である公正を維持していただきたいと、敢えて出版しました。

 

なお、本書の出版にあたっては各方面の方々に暖かいご協力、ご支援をいただきました。心から御礼申し上げる次第でございます。