日本人の心の教育(平成14年) 


 私は平成4年「教育正常化をめざして」という本をはじめて出版しました。

続いて平成6年「教育県広島は再生できるか」、平成9年「誰も語らない広島県教育の問題点」という本を出版しました。私はそれらの本の中で、学校教育の偏向した悪影響、並びに教職員の資質の問題点、公教育の秩序の乱れに対し、それを正さなければいけないはずの教育委員会や管理者である校長等の無力さを明らかにしました。しかし、多くの教職員は正常化を望んでいましたから、広島県の場合、平成11年文部省の是正指導によって、正常な教育現場がよみがえりつつあります。

 

 教育権はもともと親にあるわけですから、人間的な教育は親が子供に対して責任を持ってするべきと思います。「子は親の後ろ姿を見て育つ」といわれます。親がしっかりしていなければなりません。大人の行動が社会の中で立派な行いでないと、子供に模範となり、子供に生きる目標や指針を与えることができません。

 

 教育基本法の中に、人格形成のため「真理と正義を愛し・・・」という言葉がありますが、社会の基本には真実と正義がなくてはなりません。その真実や正義の存在は大人達が身をもって実践し、子供達に示さなくてはなりません。

 

 現代では大人社会が倫理的に非常に乱れています。社会的責任のある地位の人がその地位を利用して自分の利益のために贈収賄やセクハラ等、たびたび不祥事を起しているのは誠に好ましくないことだと思います。

 

 外務省の公費流用・横領事件、農水省の狂牛病の問題、神奈川県警、新潟県警、大阪府警の不祥事の数々、厚生省の薬害エイズ問題等、「官が腐れば国が滅ぶ」という言葉のように、日本は世界の信用を著しく失墜していくのではないでしょうか。民間でも雪印や全農の偽装ラベル事件等は国民を騙す行為であります。このような新聞報道が、子供の教育に良い影響を与えるはずがありません。

 

 子供の不登校にしても、社会や学校が信頼できなくなり、大人の言うことが子供に通じない状況で、几帳面で勉強の良くできる子供が不登校となるケースが多くなっています。

 

解決を先延ばしにしてきた不良債権等、銀行、建設会社、大型量販店等の無軌道な経済活動が優先し、これらの事は道徳観の欠如によることが大きな原因であると思います。真面目で建設的な生き方を子供に見せて、本来持っている子供の向上心や意欲を燃え上がらせるようにしなくてはならないと思います。

 

 昔は徳育といって人間の生き方というテーマで道徳をしっかり教えられていました。戦後の教育によって道徳教育が軽んじられ、その結果世の中や人心が乱れ、子供にとって不幸な状況となっているのではないでしょうか。

 

 私は私自身の戒めと考えて、この本を編集してみましたが、子供を大切に育てていくために私たちの生きる姿勢を考え直すことができればと思います。本書を読んでいただいた方に少しでも共感を持っていただけるようでしたら無上の喜びとさせていただく次第です。

 

 本書編集にあたり、御協力くださいました方々に心から御礼申し上げます。

ありがとうございました。